
2.抵当権に関する登記
抵当権設定
●将来建築される建物を目的とした抵当権設定契約は、たとえ建築後の建物の表示を追記したとしても、抵当権設定登記申請における原因証書となりえない。(昭和37年12月28日民事甲第3727号民事局長回答)
注 目的物が現存しないため、あくまでも債権的な効力しかなく、物権契約が成立しない。
●抵当権設定契約の日付が登記簿に記載された建物の建築年月日前の日付であっても、抵当権設定登記の申請は、受理してさしつかえない。(昭和39年4月6日民事甲第1291号民事局長回答)
注 建物とみなされる時期は必ずしも登記簿の新築年月日とは限らず、それ以前でも社会通念上建物として現存しうるので、登記官が登記簿の記載のみで物権契約が有効か否かを判断するのは適当でなく、受理せざるをえないとされている。
●同一名義人が数回に分けて各別に持分を取得したときは、それぞれの持分別に抵当権設定あるいは持分移転登記の申請ができる。
登記済証は、その持分取得時の登記済証のみで足りる。(昭和58.4.4民事三第2252号)
「登記の目的 何某持分一部(順位何番で登記した持分)の抵当権設定」
「登記の目的 何某持分一部(順位何番で登記した持分)移転」
●(根)抵当権者の取扱店の表示として「東京営業部」と記載することができる。(昭和57年4月28日民三第3238号回答)
※株式会社やまと銀行
(取扱店 東京営業部)
●中小企業金融公庫を抵当権者とする抵当権設定登記について、他の従たる事務所と同様の権限を有する「営業第一部」、「営業第二部」、「営業第三部」を取扱店として表示して申請できる。(「登記研究」第688号265頁)
※中小企業金融公庫
(取扱店 営業第一部)
現在 東京都千代田区大手町一丁目9番3号
株式会社日本政策金融公庫
代表取締役○○○○
(取扱店 ○○支店)
●住宅金融公庫の代理人である銀行を取扱店とする場合、取扱店の表示を「○○銀行本店営業部」とすることはできない。(「登記研究」第453号)
注 独立行政法人住宅金融支援機構(現在)
×
※独立行政法人住宅金融支援機構
(取扱店 株式会社○○銀行本店営業部)
○
※独立行政法人住宅金融支援機構
(取扱店 株式会社○○銀行) 注 本店の場合
○
※独立行政法人住宅金融支援機構
(取扱店 株式会社○○銀行○○支店)
●抵当権者の表示を次のようにする抵当権設定登記の申請は受理できない。
○○株式会社
(取扱店 株式会社○○銀行○○支店)
(「登記研究」第429号)
※○○株式会社は金融機関ではないため
●信用保証協会・信用組合の場合、その取扱店を登記簿に記載することはできない。(「登記研究」第449号)
●抵当権者が信用金庫の場合、その取扱店を登記簿に記載することはできない。(「登記研究」第492号)
注 地方によっては、登記簿に記載している場合もある。
●信用保証協会の場合、その取扱店の表示を「○○銀行○○支店」と登記簿に記載することは相当ではない。(「登記研究」第513号)
抵当権移転
●株式会社の合併による消滅会社名義の数個の抵当権の移転登記の申請は、同一申請書によって申請できる。(昭和10年9月16日民事甲第946号)
※課税価格は債権額の合計金額。
抵当権変更
●抵当権の債務者の変更登記は、抵当権者が登記権利者、設定者が登記義務者となって申請する。この場合、設定者が所有権の登記名義人であっても、申請書に設定者の印鑑証明書を添付する必要はない。(昭和30年5月30日民事甲第1123号回答)
注 理由は、抵当権の債務者の変更は重要な変更ではないからとされている。
●工場に属する土地又は建物につき工場抵当法第3条所定の目録を提出せずに抵当権設定登記をした後、備え付けの機械器具目録を追加担保に徴する場合には、変更登記申請により目録を追加提出し得る。(昭和26.10.22民事甲第2050号民事局長通達)
※普通抵当を工場抵当に変更
●工場抵当法第2条の抵当権設定登記後、同法第3条の目録に記載された機械器具の全部の備え付けをやめた場合は、同法第2条の適用を受けないものとなったことから、普通抵当への変更登記をすることができる。(昭和35.5.16民事甲第1172号民事局長回答)
※工場抵当を普通抵当に変更
抵当権抹消
●抵当権者の住所に変更があっても、変更証明書の添付があれば、住所変更登記を省略して、ただちに抵当権抹消登記の申請をしてもさしつかえない。(昭和28年12月17日民事甲第2407号民事局長通達、昭和31年9月20日民事甲第2202号民事局長通達)
注 所有権以外の権利であり、虚偽登記のおそれがまずないことと、抹消される登記であることから、申請人の負担軽減と登記経済を考慮したことによる。
●抵当権設定登記が付いたままで所有権移転登記をした後、抵当権設定登記を抹消する場合の登記権利者は、現在の所有者であり、前所有者ではない。(明治32.8.1民刑第1361号)
●「年月日不詳弁済」とする抵当権抹消登記の申請ができる。(「登記研究」第567号166頁)
弁済によって消滅しているが、その日付が不明である場合。
●混同を原因にして抵当権を抹消する場合、登記権利者と登記義務者が同一人であっても、登記済証の添付を要する。(平成2年4月18民三第1494号通達)
●混同により抵当権が消滅したが、その抹消登記をしないまま第三者へ所有権移転登記をしている場合、現在の所有者が登記権利者、抵当権者が登記義務者となり共同申請で抹消登記を申請しなければならない。(昭和30年2月4日民事甲第226号通達)
●1番抵当権と2番抵当権の設定登記のある不動産の所有権が1番抵当権者に移転した場合、1番抵当権は混同の例外として存続し、その後2番抵当権が弁済等の原因により消滅したときに1番抵当権は消滅する。この場合、1番抵当権は、2番抵当権抹消登記の原因の日に「混同」で消滅する。(「登記研究」第463号84頁、第520号198頁)
注 登記の日ではない。
●抵当権者が代物弁済により所有権を取得した場合、代物弁済による抵当権抹消の登記原因日付は、代物弁済による所有権移転登記の申請日となる。(「登記研究」第270号71頁)。
注1 所有権移転登記に必要な一切の書類の授受により、代物弁済の効力を発生させる旨の特約があるとき、書類授受の日に代物弁済の効果が生じる。(最判昭43.11.19)
注2 代物弁済による債務消滅の効果は登記その他引渡行為を完了したときに生じるが、そのことは原則として当事者間の代物弁済契約の効果が意思表示によって生じることを妨げるものではない。(最判昭57.6.4)。
注3 1番抵当権と2番抵当権があり、1番抵当権者が代物弁済を原因として目的不動産の所有権を取得した場合には、2番抵当権があっても被担保債権が消滅し、附従性により抵当権も消滅するので、「年月日代物弁済」を原因に抵当権の抹消登記を申請する。
●債権譲渡等による抵当権移転がされている抵当権の抹消登記の申請では、登記の目的に抵当権移転登記の抹消を併記する必要はなく、の抵当権設定登記の抹消である旨を記載すれば足りる。抵当権設定登記の主登記の順位番号で特定してよい。抹消すべき登記を記載するときは、年月日受付第何号と抵当権設定登記について、記載すればさしつかえない。登記義務者としては、抵当権設定登記を受けた者は登記申請人にはならないので、抵当権移転を受けた者(数次移転している場合は、最終の者)を記載する。登記済証は抵当権移転の登記済証(数次移転の場合は最終のもの)のみを添付する。抵当権は付記登記も含めて抹消される。(登記実務)
注 抵当権一部移転の登記がある場合は、登記義務者は、当初に抵当権を受けた者と一部移転を受けた者の両方、登記済証は、当初の抵当権設定登記の登記済証と抵当権一部移転の登記済証の両方になる。(登記実務)
●抵当権の追加設定(抵当権者株式会社B)の場合、既登記の抵当権者の表示が被合併会社(抵当権者株式会社A)のままになっているときは、合併による抵当権移転を経由しなければできない。
注 追加設定するには、合併証明書を添付して合併による抵当権移転登記を省略することはできない。株式会社A(吸収併消滅会社)と株式会社B(吸収合併存続会社)とは、あくまでも別法人。
●抵当権の追加設定登記を申請する場合、抵当権者の本店及び商号が変更され既登記の抵当権者の表示と、追加設定の抵当権者の表示とが一致しないときでも、変更証明書を添付して、変更後の本店及び商号により申請することができる。(「登記研究」第560号136頁)
注 商号変更の場合は、同一法人。
●抵当権設定登記後、その被担保債権の利率が引き下げられ、その引き下げ後の利率をもって追加担保の抵当権設定の登記を申請するにあたっては、前に登記された抵当権についての利率引き下げによる変更登記は、その前提条件として必ずしも必要ではない。(昭和41年12月1日民事甲第3322号民事局長回答)
●前登記が「年月日保証契約による求償債権」であるのに、追加設定が「年月日保証委託契約による求償債権」である場合、前登記の債務者が「甲野太郎」であるのに、追加設定の債務者が「株式会社乙」である場合は、いずれもその追加担保の登記の申請をすることはできない。(「登記研究」第456号128頁)
●抵当権抹消登記の権利者は、抹消登記申請時の所有権登記名義人であり、設定当時の所有権登記名義人は、抵当権抹消登記の登記権利者とはならない。(明治32年8月1日民刑第1361号回答)
注 債務の弁済が抵当権設定当時の債務者兼設定者によりなされても、現在の所有権登記名義人が登記権利者となる。
●共有者全員の持分に対する抵当権設定登記の抹消は、共有者の一人から共有者全員のために登記義務者とともに申請できる。(「登記研究」第425号127頁)
注1 不動産の共有者A・Bの場合、登記権利者をA・Bと記載し、共有者の一人を(申請人)とする
注2 共同担保の不動産甲(所有者A)、不動産乙(所有者B)の場合は、A・Bがともに申請人となる必要がある。(保存行為に該当しない)
●弁済を原因とする抵当権抹消登記は、共有者の一人から共有者全員のために登記義務者とともに申請できる。(「登記研究」第463号85頁)
●抵当権者の合併または相続後に、抵当権が消滅したときは、抵当権を抹消するには、その前提として抵当権移転登記を経由する必要がある。(昭和32年12月27日民事甲第2440号回答)
注 抵当権者の合併または相続前に抵当権が消滅した場合には、抵当権移転登記をしないで、抹消登記の申請が認められている。
●抵当権が消滅した後、抵当権設定者が死亡したときは、抵当権抹消登記は、共同相続人全員またはそのうちの一人から登記義務者とともに申請できる。(「登記研究」第394号255頁)
●抵当権設定者が死亡した後に、抵当権が消滅したときは、抵当権抹消登記は、抵当権設定者について相続登記を経由してからする。(「登記研究」第661号225頁)
●破産管財人が破産財団から放棄した特定の不動産について、抵当権設定登記の抹消登記の申請は、破産会社の清算人を選任し、別除権者である抵当権者と共同で申請する。(「登記研究」第657号249頁)
●極度額の増額変更登記のある場合であっても、根抵当権抹消の登記の申請については、当初の根抵当権設定登記済証だけでよく、根抵当権変更登記済証まで添付する必要はない。(「登記研究」第465号79頁)
●A・B共有不動産について、A持分に抵当権設定後、A単独所有になったため、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更登記をした場合、抵当権抹消の登記申請に添付すべき登記済証は、設定時の登記済証と所有権全部に及ぼす変更の登記済証である。(「登記研究」第474号141頁)
注 オンライン指定庁に、A単独所有になったため、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更登記をした場合、抵当権抹消の登記申請に添付すべき登記済証は、設定時の登記済証のみでさしつかえない。新たに登記名義人にならないので登記識別情報は通知されない。
その他
順位譲渡
●順位変更の場合と異なり、2番抵当権のために順位譲渡の登記がされた後、1番抵当権を抹消する場合、2番抵当権者は利害関係人に該当する。(昭37年8月1日民事甲第2206号)。
※ 1番抵当権が抹消されると、2番抵当権者はそれまで順位譲渡の効果により優先弁済権を主張し得た国税債権に劣後する事態が生じる可能性があるため、利害関係人2番抵当権者の承諾書の添付を要する。
注1 1番抵当権の抹消の登記をしたときは、順位譲渡の登記は、登記官が職権で抹消する。(「登記研究」第384号78頁、324号75頁)
2番抵当権の抹消の登記をしたときは、順位譲渡(又は放棄)登記は、登記官が職権で抹消する。(昭和54年3月31日民三第2112号通達、不動産登記記載例356)
●順位譲渡の抹消の登記は、原則として、順位譲渡の登記済証を添付するが、これに代えて順位譲渡を受けた後順位抵当権者の抵当権取得の登記済証を添付することもできる。
●順位2番抵当権のために順位譲渡(又は放棄)の登記をした順位1番の抵当権の抹消登記をする場合には、2番抵当権者は利害関係ある第三者に該当する。
。(「登記研究」第324号75頁)
●順位放棄の登記をした後、その順位放棄をした抵当権の登記の抹消をする場合は、順位の放棄を受けた後順位抵当権者は登記上利害の関係を有する第三者に該当する。(「登記研究」第235号69頁)
●1個の抵当権の一部について、順位譲渡の登記を申請することはできる。
順位変更
●抵当権の順位変更の登記の申請は、不動産ごとに各別の申請書によるべきであるが、共同担保である場合において、各不動産についての順位変更にかかる抵当権の順位番号、および変更後の順位がまったく同一のときは、同一の申請書ですることができる。(昭和46年12月27日民三第960号依命通知)
.●順位変更の登記の申請は、不動産ごとに各別の申請書によるべきであるが、共同担保である場合において各不動産についての順位変更に係る抵当権の順位番号及び変更後の順位が全く同一であるときは、同一の申請書ですることができる。(昭和46年12月27日民三第960号依命通知)
●抵当権の順位変更については、登記がその効力要件であるので、仮登記をすることはできない。
●順位変更の仮登記はすることができないが、抵当権設定の仮登記の順位変更はできる。
●同一抵当権者間でも順位変更の登記は認められるが、この場合の登記原因は「合意」ではなく、「変更」である。(不動産登記手続総覧2、2338頁)
●1個の抵当権の一部について、順位変更の登記をすることはできない。
※1個の抵当権の一部について、順位譲渡の登記を申請することはできる。
●順位変更による変更後の順位を更に変更する場合には、別個の順位変更の登記による。(昭46年10月4日民事甲第3230号)
注 変更前の順位に戻すため、「合意解除」を原因として抹消することはできない。
「錯誤」を原因として抹消することはできる。
●順位変更の登記の抹消登記申請書には申請人全員の抵当権等を取得した際の登記済証を添付する。(昭46年10月4日民事甲第3230号)
(昭46.10.4民甲3230号)。